柳原会員による書籍紹介シリーズ投稿(その③)

  会員のための書籍紹介 キャリアネット・ライブラリー

      『働かないおじさん問題のトリセツ』 シリーズ書評

      柳原正年 富山社会人大楽塾 リポートシリーズ その③

前回は、社会環境が、働きたくても働かせてもらえない『働かないおじさん問題』を生んでいる背景について説明しました。

センセーショナルな『働かないおじさん』という表現について、怒りを経営者にぶつける人も多いかもしれません。

それは1990年代後半から始まった、金融バブル損失解消に伴う大企業の人員削減人事政策、陰湿な中高年再教育(恐怖の窓際族異動研修)による退職勧告のトラウマを思いだすからです。

書評を書いている私自身も、当時東京にいて、大企業のリストラ(退職準備プログラム)を目の当たりにしてきました。

あれから25年、小手先だけの人員減らしで変化対応が遅れた「日本型雇用システム」は機能不全に陥り、今度は、令和の『働きたくても働かせてもらえないおじさん問題』として、社会問題化してきました。

「働かないおじさん」には、日本型雇用システムにより、高い給料をもらっていながら成果が出せない(出そうともしない)、「給料どろぼう」のイメージが強いと思いますが、実は、企業が社会変化に乗り遅れたつけが回ってきた、「経営者・人事・従業員」三すくみジレンマなのです。要するに「ゆでガエルパニック」症候群です。

「ゆでガエル」現象・法則・症候群は次のURL参照ください。

https://www.hrpro.co.jp/glossary_detail.php?id=189

会員の皆様の中には、それは従業員1000名を超える上場大企業の問題で、北陸の中小企業には当てはまらないと思われる方も多いと思います。

しかし今回は違います。デジタル革命(DX;デジタルトランスフォーメーション)やICT革命で、根底からジョブ革新が起こっているからです。おまけに、新型コロナまで、人間の「生き方の変更」について加担しています。

中小企業の中高年給料は、大企業に比べ抑えられており、人件費のコスト圧迫は心配ないと考えている経済団体がありますが、これからの新しい社会では生き残っていけません。

すなわち会社の大小を問わず、会社も、従業員も変化せざるを得ない時代になったのです。

「人生100年時代」のライフシフトに伴う意識改革が決め手となります。

特に重要戦力である「ミドルシニア」を活性化させる意識改革の重要性が叫ばれているのです。

キャリアネット北陸の「ライフシフト」を基盤とした社員研修の「重要性」が、ここにあるのです。

著者は、『働かないおじさん問題』を次の通りまとめています。

(p.43)以下、原文引用です。

●「働かないおじさん問題」の原因は、本人だけではなく、日本の雇用システムや環境変化などが複雑に絡み合った社会問題。

●この問題を放置することは、会社にとっても本人にとっても、大きなリスクが存在する。

●「働かないおじさん」は故意にさぼっている人ではなく、真面目に頑張っているが、「うまく働けない」ミドルシニアが中心。

●「うまく働けない」理由や、パターンはさまざまである。解決を目指すには、個々の事情にあわせた誠実な対応が必要。

●日本独自の雇用システムが、「働かないおじさん」と呼ばれる「ロー・パフォーマー」(やる気のない社員・仕事ができない社員)を作ってきた側面もある。 解決するためには、こうした経緯や背景を考察する必要がある。

柳原 正年

キャリアネットワーク北陸 参与

富山社会人大楽塾 代表

関連記事