広野会員ブログ「書籍紹介 私のお勧め!」

皆さまこんにちは。会員の広野雅子です。
今回は、山田会員や岡野理事長の書籍紹介に続き、ここ半年余りの間に私の身の回りに起こったドタバタと、ブログサービス「note」で100万回以上読まれて書籍化された岸田奈美さんの書籍の紹介をさせていただこうと思います。

昨年暮れ、近くに住む娘一家全員がインフルエンザになり、世話をしていた私も感染。喘息も併発して1週間余り床に伏してしまいました。
同じ時期に東京の息子一家も家族全員少しずつ日をずらしながら、次々とインフルエンザに罹患したので、お互いに、「今回の帰省は難しいかも…。」と、諦めかけていましたが、「何とか正月には行ける!」と、元旦に帰省して来ました。
ところが、新幹線から降りて一家が私たちの車に乗り込もうと扉を開けたとたんに、皆の携帯電話から一斉にアラームが鳴り地震!

私は彼等の荷物を車に積むためにハッチバックを開けた矢先で、瞬間的に「地震だ! みんな、すぐに車から離れて!」と叫び、孫の手を取って少し離れた安全な場所に走りました。そして助手席の扉や後部座席のスライドドアが全開で、後の扉も大きくはね上がったまま上下左右にグラグラガタガタと大きく揺れる自分の車を眺めながら、「壊れる、壊れる、車が壊れる。地震、早く止まって…。」と祈るように言いながら、揺れが収まるのを待ちました。

幸い車は壊れなかったものの、津波警報も出たので、頑丈な立体駐車場に移動し、しばらく垂直避難。その後、「海に近い自宅に帰るのは危険。心配だから自分たちの家に泊まるように…。」と言う娘夫婦の言葉に甘えて、私たち夫婦と息子一家の計6人は、娘の嫁ぎ先に避難し、泊めてもらうことになりました。
(能登半島地震で被災された方々に改めてお見舞い申し上げます。そして、7カ月が経過した今も、未だに復興していない地域の方々には、少しでも早く復興し安心した生活を取り戻されることを心より願っております。)

幸い、私たちの家の被害は少しで済んだものの、息子一家が東京に戻った後は、平日は仕事、休日は避難グッズを買い集め、バタバタと日が過ぎてしまいました。

大体の物を買い揃え、やれやれと思ったら、また別の病気で、近くに住む孫の発熱が続き、休日や夕方は病院通いや孫の面倒を見ることに…。1歳の孫は、まだ抵抗力が弱いため、保育園の洗礼を受けて、次から次へと色んな病気をもらってきては病院通いをしていました。
やっと孫が少し良くなってきたと思ったら、今度は娘までもが、仕事疲れや子供の看病疲れから、免疫力が落ち、倒れて動けなくなり、救急車で運ばれ数日間入院することに…。

おまけに娘の入院中に、以前から入院していた義母の容態も急変。娘は何とか葬儀に参列できたものの、安静が必要。私たち夫婦は、県外の息子一家や義弟夫婦の帰省や葬儀の準備で、てんやわんやの忙しさ。その後も休日は、空き家になった義母の家の片付けや法事、各種手続きに追われ、ところどころに孫守りも入る日々となりました。その上、普段の仕事以外に、講師の依頼も2つ引き受けていたので、今更断わることもできず、もうギブアップ状態に…。それでも、どうにかこうにかそれらの仕事をこなして事なきを得ました。

「やっと少しホッとした。」と思ったのもつかの間、空き家になった義母の家と私たちの家の両方の家の屋根修理の必要が発覚し、業者さんにお願いすることに。見積りが終わり、「いざ工事」となったところで、今度は、それまで1人だけ病気もせずに一番元気だった主人までもが急な病気になり、町医者から紹介して頂いた総合病院で10日程の入院治療。しかし主人の容態は良くならず、退院から2週間後、その病院から新たに紹介された別の総合病院で再検査していただいた後、緊急手術となりました。回復までにはまだまだ時間がかかると言われたものの、命に別状はなく、手術は成功し、退院もしたので、ホッと一安心。延期していた屋根の修理をしてもらっていますが、その間に、パソコンとクーラーまでもが壊れ、仕方なく注文。と思ったら、今度は、私の姉まで膝を痛め手術をするというおまけまでつきました。

この半年間、これでもか、これでもか、と追い討ちをかけるように突発的な出来事が起こり、無我夢中でバタバタの日々を過ごしているうちに、この原稿の締め切りも迫ってきました。「どうしよう。早く何か読んで書き始めなくちゃ。でも何を書こう…。」「間に合うかなぁ。」そんなとき、題名に目がとまり読んだのが、岸田奈美さんの「もうあかんわ日記」でした。

私のドタバタなど比較にならない著者の大変な日常の様子を、軽快な大阪弁の語り口で、面白可笑しく描いたこの日記を読み、私も頑張らねばと、元気をもらいました。

この本は、著者が、「人生は、一人で抱え込めば悲劇だが、人に語って笑わせれば喜劇だ。」「ユーモアがあれば、人間は絶望の底に落っこちない。」との思いから、母親の入院から退院して落ち着くまでの37日間の出来事を、毎晩日記としてブログサービス「note」に書き綴って公開したものが編集者の目に留まり、単行本として出版されたものです。

著者の父は他界、弟はダウン症、車椅子生活の母はコロナ禍に生死をさまようような大手術。母親の入院中に、父方のおじいちゃんの葬儀があったり、元々ちょっともの忘れが出てきたなぁくらいに思っていた同居のおばあちゃんの認知が一気に進み、タイムスリップして色々な問題を起こしたり、洗濯機と掃除機と電子レンジがいっぺんに壊れたり、自宅に住み着いた鳩と格闘したり、4人家族の著者に毎日次々におそいかかる、「もうあかんわ」の出来事。どれか一つだけでも大変なのに、彼女はすべてを抱え、託されている。こんな大変な日々を過ごしながら、どうしてこんなに面白可笑しい文章が書けるのか、すごい!と感心しながら読み進めるうちに、なぜか自分も救われて、頑張らねばと元気が出てくる。そして、何とかこのブログにも手を付けることができました。

相田みつをさんの、「いろいろあるんだな にんげんだもの いろいろあるんだよ 生きているんだもの」の詩が脳裏をかすめました。人生100年時代。これからも、良いことも悪いことも、色んなことが身に起こるでしょうが、著者の岸田奈美さんのように、明るく乗り越えていきたいものです。

著者が日記の最後に綴った「死を前にして、はじめて、人は勇気を出せるし、心から感謝もするし、なに気ないことに幸せを感じる。死ぬことにぶち当たると、生きることにもぶち当たる。・・・命が永遠ではないのと同じで、もうあかん時間も永遠には続かない。」の言葉が心にしみました。

先日、テレビ(NHK)から、坂井真紀さんとアナウンサーの声が聞こえ、「ベンチャー企業家だった父は急逝。母は突然車いすユーザーに。弟はダウン症。祖母にはもの忘れの症状が・・・。あれっ、それって、もしかしたら岸田奈美さんの・・・?」と思い、テレビにかじりつくと、「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(2024年7月9日スタート 全10回 8月13日 第1回~第3回一挙再放送)の番組宣伝でした。
その晩、見逃し配信されていた第1話を観ました。

私が読んだ「もうあかんわ日記」よりも前のエピソードで、「弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった」の話でしたが、母親が車いす生活になった経緯や、著者の高校時代のエピソードも分かり、とても興味深い内容でした。早速、文庫本になった同作品も購入し、今は、夏休み中にプライムビデオで、第10話までの全話を観るのを楽しみにしています。

岸田奈美さんの「もうあかんわ日記」(ライツ社)と、「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の番組(NHK)や同書籍(小学館及び小学館文庫)が、皆さまへの力になることを願っています。

広野雅子

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