山田 智子
皆さまお久しぶりです。会員の山田智子(やまださとこ)と申します。ようやく朝晩は涼しくなってきましたが、皆さま夏の疲れはありませんか。
これまでで最も暑いと言われたこの夏。手紙やメールを締めくくるとき、「くれぐれもご自愛ください」と書きながら、祈りの気持ちがぐっとこもるのを感じました。
キャリアネットのブログには、会員の方々が取り組んでいらっしゃること、趣味、仕事、ボランティア活動、お薦めの本の紹介などがあり、毎回楽しみに拝読しています。
さすが!それぞれに、「ご自分を大切にされ、人生を豊かに生きるための処方箋」をお持ちですね。
私たちは自分を大切にしなければと分かってはいても、ともすれば、家族や仕事を優先して、自分のことを後回しにしがちです。私も、13年前にまさかのがん宣告を受けたときがそうでした。私のかかりつけ医曰く、相当な「ご自愛不足」でした。その後の私は、まずは自分のからだファースト、身体と心と相談して過ごすようになりました。
何だかうまくいかない、気持ちが落ち込んでいるときの私の「ご自愛」とは?
実は、「アップルパイ」を焼くことなんです。

まずは、常備しているりんごをザクザクと刻んでお砂糖とレモンを入れて煮ることから始めます。バターとシナモンも加えて、パイシートで包んで焼くこと30分。りんごを煮るときのあま酸っぱい香りと、アップルパイが焼けるときのちょっとバターの焦げた香りが大好き。少し焦げ目のついたアップルパイが焼きあがり、サクサクという音を楽しみながら、焼きたてを頬張れば、おいしい!と思う。何故だか、おいしいからきっと大丈夫と思える。幸せな気持ちに満たされて「ご自愛」の完了です。
私のパンとお菓子作りの歴史は子育ての頃に遡ります。凝りだすと止まらない性分のため、身体に良い材料にこだわり、自分の納得のいくものをと、パンやお菓子を焼き続けました。付き合わされる家族の反応は?「お母さん美味しい」と、初めのうちは喜んだ息子たちでしたが、ついに「お店屋さんで買ってきたのが食べたい」と言い出しました。まあ、いろいろありつつも、家族の大好物で、今も焼き続けているのが「アップルパイ」です。

少しだけ自慢させてもらうと、私のアップルパイのファンは、16年間を過ごした静岡にも居ますし、富山でも増加中です。今は亡き友人たちとそのご家族も大ファンで、とても楽しみにしてくれました。遠方の息子たちの人生がちょっとつらそうなときには、応援する気持ちをたっぷりと載せた母のアップパイを宅配便で送ることもあります。
最近は夫婦2人暮らしであることから、小ぶりのものを2台焼くことにしていて、1台は自家用、もう1台は誰かのためになります。
「このアップルパイを今日は誰に届けようか」と、大切な人たちの顔を思い浮かべます。「そうだAさんは介護で疲れているようだから、これを届けがてら、ちょこっと話をして来ようっと」
私の焼くアップルパイで少し元気になってくれたら嬉しいなと思いながら。誰かに喜んでもらうことで、自分も幸せな気持ちになれるから、一石二鳥ですね。
そういえば、亡くなった母は料理上手で、人をもてなすことが大好きな人でした。特に母のお好み焼きは絶品で、誰かを喜ばせるためにお好み焼きを焼いていました。母の葬儀の際、母のお好み焼きのファンの方々からお礼の言葉をいただき、娘として「母らしいな」と誇らしく思いました。気づくと、自分も同じことを喜びとしていて、何だか不思議な感じがします。

秋は、りんごの美味しい季節。大好きなりんご「紅玉のアップルパイ」を、誰かのために焼こうと思っています。それが私のご自愛にもなりますので。

山田智子